壊れていく親を見ていた子ども
祖父が死んだあと、父は変わった。 はじめに父がしたことは、外につながる家中の出入り口にセンサーを付け始めたことだった。玄関を開けるたびにコンビニの入店音みたいな音がするのが、子ども心にすごく嫌だったのを覚えている。まるで...
祖父が死んだあと、父は変わった。 はじめに父がしたことは、外につながる家中の出入り口にセンサーを付け始めたことだった。玄関を開けるたびにコンビニの入店音みたいな音がするのが、子ども心にすごく嫌だったのを覚えている。まるで...
祖父について語ることはそう多くない。というのも大半が「厳しかった」という印象だけで、記憶に残っているものが少ないからだ。だが家父長制の権化のような祖父が作り出した環境は、安定的な母親が傍にいたにもかかわらず、僕の愛着形成...
「書くこと」の原点は虐待的な思い出からスタートする。 僕は父親に虐待を受けてきたが、祖父もまた厳格で前時代的で、虐待的な人間だった。家庭内で世代間連鎖が起こっていたと理解できたのは、大人になって随分経ってからだった。 祖...
フリーランスの生活をはじめて、パンデミックが起こって、友達付き合いが激減した。というかほとんど皆無に近くなった。外出しての作業はただでさえ少ない精神のリソースを大幅に消費するので、ここ数ヶ月は家に引きこもりきりで仕事をし...
法的な罪を犯し、それを背負って、覚悟を持って何かを成している人たちを知っている。法的な責任を果たしたことで満足し、己の罪の本質に向き合うことをしない人たちを知っている。
「あなたの好きなものは?」と問われると、答えに窮する。それは好きなものが多すぎて絞れないからではなく、何も思いつかないからだ。
ふと自分の内面に意識を向けると、そこにはいつも子どもの姿をした自分がいる。膝を抱えて真っ暗闇の中に座る、おそらくは小学校高学年くらいの自分の姿がイメージできる。そこは心の最深部のような場所で、他人は絶対に入ってくることが...
もう何年も実家に帰っていない。母や犬には会いたいが、父に合うのは今の僕にとっては危険すぎる。トラウマの課題が自覚できるレベルで顕在化してきてからは、毎年夏と冬に律儀に行っていた帰省も途絶えた。 生家に行き、そこにいる「家...
つい先日、娘が1歳の誕生日を迎えた。妻と「手紙を書こう」という話になり、彼女が買ってきてくれた便箋を前にして僕はあることを思いついた。字が読めるくらいになった娘への手紙に加えて、いつか大きくなった娘へ宛てた手紙を書こう。...
大晦日、朝方から強い不安発作に襲われている。これがクリスマスに続いての記念日反応というやつなのか。ともかく、残り少ない気力をもって今年の記録を残したい。