わたしたちは決して独りではない。『 #発達系女子 の明るい人生計画』

誰かに助けを求めることは悪いことだろうか。
自分の問題は本当に自分ひとりで解決しなければならないのだろうか。

幼い頃の僕は助けを求められなかった。いや正確には、助けを求めるという選択肢すら持っていなかった。 人に頼るなと育てられ、誰かに弱さを見せれば罰を受けた。 だから僕は自分が誰かに助けてもらえる存在で、助けを求めていい存在なんだと思うことはできなかった。

人に迷惑をかけてはいけない。そんな言葉がこの半生を呪い続けていた。
誰か助けてくれ。心ではそう悲鳴を上げながら、同時に諦めてもいた。

遠い時間の向こう、あるいは今も心の奥にいるかつての自分に対して、この本は救いの言葉を贈ってくれた。

#発達系女子の明るい人生設計(宇樹義子)

バイブルであり、サバイバルブック

宇樹義子著「#発達系女子の明るい人生計画」。
著者の生の体験が綴られるエッセイ、著者の体験をひとつの事例として対処法を提案する「メソッド」、そして今すぐにでも役立つ福祉関連の情報が詰まった巻末資料。この本は3つのパートで構成されている。

テーマ自体は発達障害やトラウマ性疾患、それに由来する生きづらさを抱える女性としている。しかし発達障害とは異なる診断を受け、かつ身体的性も性自認も男性である僕が読んでも、この本の情報はかなり有益だった。

僕はこの本をかなり実践的なサバイバルブックと捉えている。 検索エンジンを使って支援情報を探すための具体的なキーワードの入れ方、詐欺的療法やカルトに対する心構え、助けが必要なときどんなところに連絡すればよいか、などなど。 そんなふうにこの本には、シビアな状況から脱出する知恵が随所に散りばめられている。

そして膨大な情報は単にノウハウの伝達にとどまらず、「あなたを助けてくれるものはこんなにある」というメッセージをも伝えてくれる。

支援機関や福祉制度の情報が盛りだくさんの巻末資料を読んで、僕はどうしてか泣いてしまった。感情を揺さぶるような文章があったわけではない。まるで著者が「ここは完全な絶望じゃない。あなたは助けられていい。助けてくれるところはこんなにあるんだ」とあの頃の自分に力強く言ってくれているような気がしたからだ。

そのメッセージは著者のTweetを引用するかたちで、明確に読者に示される。

「お前ら、全員助けられろ。助けられてしかるべきだ。おかしいのは個人じゃない、システムだ。それをみんなでなんとかしよう」

『 #発達系女子 の明るい人生計画』(p243より一部引用)

僕らは助けられていいのだ。何かに、誰かに頼ることを躊躇しなくていいし、それを責める権利は誰にもない。
そしてなにより、わたしたちは独りではない。