大切なのは「伝えること」。絵本を通じたNPO法人ぷるすあるはの取り組み

大切なのは「伝えること」。絵本を通じたNPO法人ぷるすあるはの取り組み

精神疾患の親を持つ子どもたちに向けて、絵本という形でメッセージを送り続けているNPO法人「ぷるすあるは」。重要なことである反面、子どもへの伝え方が難しい心の病について、独自のアプローチからの支援を行っています。


「ぷるすあるは」

精神科医と看護師によって構成されるぷるすあるはは、精神疾患の親を持つ子どもたちをはじめ、様々な生きづらさを抱える子どもたちの支援を行う団体です。主に展開しているのは絵本を始めとした創作物を使った支援と啓発。それらのツールによる後方支援というアプローチから支援活動を展開しています。

またYoutubeのチャンネルにて、絵本の朗読やオリジナルコンテンツの配信も行っています。

 

参考:「家族にありがとうがしんどい子どもたちがいます」

「子どもたち」の心にあるもの

精神障害・精神疾患の親に育てられた子どもたちは、「家族・親のことを誰にも相談できない」という孤立感と、「親の状態が悪いのは自分のせいかもしれない」という不安感を抱える傾向にあります。

どちらの辛さも原因は複合的なものですが、共通するのは「子ども自身が精神疾患について正しい知識を持っていない」という点です。子どもたちは親の不調がなぜ起きているのかわかりません。だからこそ、自分が何か悪いことをしたからお父さん/お母さんの調子がわるいのだ、と自身の行動と親の状態を結びつけて考えてしまうのです。

子どもたちへの支援で重要なこと

子どもたちへの支援でなにより重要なのは、「今、親に何が起こっているのか」についての正しい情報と、「それは子どものせいではない」という事実を伝えること。

ぷるすあるはではそのためのツールとして様々な創作物を送り出しています。

代表的なものは繰り返し触れているように「絵本」です。

絵本は「うつ病」「アルコール依存症」「統合失調症」のように親の疾患によってケースが分かれており、それぞれの症状に特有の状況に子どもが翻弄されてしまうところから物語がはじまります。しかし最後には必ず子どもから大人への状況の説明があり、「君のせいではない」という明確なメッセージによって完結します。

 

参考:「お母さんがうつ病になったの」子どものケアの絵本

 

絵本は単純に子どもの状況理解を助けるというだけではなく、親子で学べる心理学習ツールとしての性質も持っています。巻末には大人から子どもへ、物語の内容をどう伝えるのがベターかといったヒントが載っており、親子双方の精神疾患への理解を助けてくれます。

絵本という形式の持つメリット

絵本という手法が優れているのは、なによりもストレートに子どもへ情報を伝えることが出来るという点です。ぷるすあるはの絵本は一般的な子ども向けの絵本と同程度の読解レベルになっているため、読み進めるのは決して難しくありません。

「今、親に何が起こっているのか」や「それは子どものせいではない」といった内容が子どもに伝わりやすく、孤立感や不安感、自罰感情のケアに繋がることが期待できます。

また絵本は大人にとっても優れた啓発ツールであると感じます。それは作者であるチアキさんの絵や文が非常に高い表現力を持っていることもありますが、「精神疾患のメンバーがいる家庭」というケースに内容が特化しているため、単なる病気の理解以上にどのように子どもに接すればよいかの方向を示してくれるためです。

このことから、ぷるすあるはの絵本は親子が一緒に読める「読み聞かせ」という方法に適しているのではないかと思います。なにより大人がしっかり教えてくれているという安心感を子どもに与えることができますし、「どうして?」と子どもに質問された場合の対応についても巻末にヒントが載っています。

大人も子どももそれぞれ現状をしっかりと理解・把握することは、環境を安定させる上で非常に重要なことであり、次のケア段階へ繋げる道にもなるでしょう。

手段の限界

ただ万能の手段というのはありません。絵本をはじめとした創作物が優れたツールであることは間違いありませんが、物語という性質上の限界もあります。

当然ながら絵本に描かれる物語と現実は必ずしも一致せず、ぷるすあるはには「絵本のようにはいかない」といった反応も寄せられているようです。また場合によっては「こうすべき」という押し付けに感じられてしまう場合もあるといいます。

このような賛否両論的なリアクションは、同様のテーマを扱った他の創作物(例:映画「ツレがうつになりまして。」など)にもみられるものです。

自分たちの置かれた状況を完璧に説明する作品を見つけるのは困難です。あくまでツールはツールとして、手段の一つとして捉えることが重要だと言えます。

重要なのは「伝え・届ける」こと

絵本はあくまで子どもへの伝達手段のひとつであり、本当の目的は子どもの孤立感や自罰感情をケアすることにあります。

そのための方法はおそらく無限にあるでしょうが、ぷるすあるはの提示する最適解が絵本という形だとも言えます。

ぷるすあるはでは物語ベースのツール以外にも、子どもがいざというときに連絡できる先をまとめたもの、自分の状態を把握するためのチェックリストなど、様々なツールを制作しています。(下記参照)

つらいことを抱え込まずに表現すること、そして助けてくれる人たちが確かにいること。子ども向けのツールにはこういったメッセージが込められているように感じられます。

子どもと親のケアガイド(「子ども情報ステーション」より)
こまったときカード(「子ども情報ステーション」より)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツール引用元:子ども情報ステーションbyぷるすあるは

 

精神疾患の親を持つ子どもへのケアはまだ始まったばかりで、各団体・支援者ともに手探りの状態が続いていると言えます。そのなかにあって独自の方向性を貫くぷるすあるはの活動は、大きな意義のあるものだと言えます。

多くのツールはフリーで利用することができるので、必要な場合はぜひ活用してみてはいかがでしょうか。